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第84回
2016年9月1日更新

メープルシロップ

カエデ

 先日、約1200品種3000本の世界のカエデがあつまる「カエデの郷ひらら」(奈良県宇陀市)に伺った。日本では、秋に赤く染まる紅葉(もみじ)の呼び方のほうに親しみを覚える方が多いかもしれない。しかし、紅葉もカエデだ。カエデは、世界に実に様々な品種が存在する。手のひらのようなカエデの形ばかりではなく、笹のように細い葉や、クルクルと巻き込んだ葉のカエデも存在する。そして、カエデには四季折々の顔がある。写真家の入江泰吉(明治38年-平成4年)に師事した元料理写真家で、カエデのコラージュ風写真を撮り、カエデの着物のコレクターでもある同施設顧問の矢野正善さんによると、春のカエデが格別に良いのだそうだ。可愛らしいピンクのカエデは、まさに春の優しい色だ。カエデは、淵がピンクに色づくものや、夏に赤く染まるカエデなど実に様々な色を放つ。「紫式部」と呼ばれるものは中央が若緑色で、周りが濃いピンク色、黄色の斑が出るものは「光源氏」と呼ばれるなど、これほどまでにカエデには種類があるのかと驚いた。
ピンクや紫など美しいカエデの葉

サトウカエデ

 カエデはお料理との関係も深く、それは私達の食文化の中に根付いている。緑の美しいカエデや、赤く染まったカエデがお皿に添えられるとお料理も生き生きとし、美しさと美味しさを増すようだ。懐石などでも四季を表現するものとして欠かせない存在である。
 巷で人気急上昇のパンケーキにも添えられるメープルシロップの原料は、カエデの一種「サトウカエデ(シュガーメープル)」の樹液だ。北アメリカの直径30cmほどの大きなシュガーメープルに穴を開けて樹液を取り出し、煮詰めてつくる。樹液40リットルで1リットルのメープルシロップが出来る。メープルシロップの生産量は80%がカナダだ。

メープルシロップ

 メープルシロップには、採取時期や煮詰める工程で、グレードに分けられる。春先に一番で採取され、透明度が75%以上のものが最高級とされている。日本のスーパーなどで見られるのは、真ん中のグレードのミディアムが多いようだ。以前は5つのグレードに分けられていたが、新基準では4つのグレードに分けられる。
 光の透過率により、50〜74.9%が、美しい琥珀色で味わいがあるアンバー(リッチテイスト)、25%〜49.9%がダーク(ロバストテイスト)で、アンバーより更に後に採取された樹液でつくり、独特の風味が増す。光の透過率24.9%以下は、ベリーダーク(ストロングテイスト)で、採取時期の最後に採取され、濃い風味を持つ。
 樹液を煮詰めただけの100%天然食品のメープルシロップは、健康に関心を持つ私達にとって気になる食材だ。砂糖やハチミツに比べてカロリーや体内で食品が糖に変わり血糖値が上がるスピードを表すGI(グリセミック・インデックス)値が低いとされている。また、カルシウムは、ハチミツの約40〜50倍、カリウムは約15〜20倍も含まれている。その他ミネラルやビタミンB1、B2なども豊富だ。

頑張れ!ニッポンのカエデ!

 日本でサトウカエデは街路樹として植えられることが多いが、埼玉県の秩父では国産メープルを振興する各種のプロジェクトが起きている。カナダが本場で日本では採取できないと思われている方も多いのではないかと思うが、秩父地方には日本にある20数種のカエデのほとんどがあるという。国産の風味豊かなメープルシッロプが採取されているそうだ。是非とも味わいたいものだ。
 カエデは、私たちの街並や公園、庭などを穏やかに彩り、木材としては味わいある家具や、漆器の器をはじめ、日本の伝統工芸の中にも活用される。また、目の疲労などに効用があるという漢方の生薬の「メグスリノキ」もカエデである。ちょっと調べてみると、私達の生活はカエデと実に多くの接点がある。目で楽しみ、使って便利、そして食べて美味しい。私達の日常を彩ってくれる万能選手、最強のチームだ。
 リオのオリンピックも終わり、4年後はいよいよ東京だ。世界から集まる人々に、日本に根付いたカエデの文化を味わってもらえたらどんなに素敵なことだろうか。そんな日が来ることを期待しつつ、皆さんも日本のカエデを意識的に、さらに身近に付き合ってみてはどうだろう。
 ホットケーキやワッフルはもちろんのこと、メープルシロップで鶏の照り焼きなんていうのもなかなかいけますよ。
カエデの郷ひらら

海豪うるる プロフィール

青山学院大学卒。
15年以上にわたり、各種の家庭料理を研究。
食ともに、ヴァイオリン、陶芸、茶道など多彩な趣味を生かし、《五感で味わう彩食レシピ》を提案している。
また、食は年齢、性別、国籍を問わず、誰にも等しく必要で極めて身近なもの―そんな食を「万国共通の言語」のように捉え、食を通して世界各国の人とつながることを目指している。時には、《食》と、教育や政治、科学、音楽、映画など様々な分野の間をクロスオーバーしつつ、「美味しく、楽しい」という気持ちを生み出す活動を展開している。
郷里・奈良県の依頼で「奈良県観光産業活性化推進会議」委員も務め、現在は「奈良市観光大使」。
著書に、『本場の人気バル直伝!ピンチョスレシピ』、脳科学者の茂木健一郎氏との共著『脳を幸せにするレシピ』(いずれもPHP研究所)がある。
URL: http://www.ururu-ururu.com
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