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第97回
2017年 10月2日更新

フードトラック



この映画、観た?

『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(2014年・米)という映画をご存知だろうか。
――かつて、新進気鋭のシェフとして脚光を浴びていたカールは、今では無難な料理をつくり続けることを店に強要され、納得のいかない毎日を過ごしていた。そんな時、有名なグルメ評論家に酷評され、オーナーと衝突して店を辞めてしまう。
 傷ついたカールは、人生を見失いかけながら、別れた妻と息子との夏休みの旅行に出かける。旅行先のマイアミで、とても美味しいキューバサンドと出会い、フードトラックで、サンドイッチの移動販売を息子と一緒に始める。旅先で食材を調達し、その土地の食材や料理法を生かした彼のサンドイッチが次第に評判となる。絶妙な焼き加減のお肉、こんがりと焼き色がついたパン、そこにトロリととろけるチーズ、最高の状態を見逃さないように、火加減を見る目は真剣だ。聡明な小学生の息子がスマホを駆使してSNS(ソーシャル・ ネットワーキング・サービス)に写真や販売場所を投稿すると、多くの人がカールのフードトラックを待ち受け、彼のサンドイッチを美味しそうに頬張り、笑顔が満ちていく――
 トラックはフードだけでなく、人生や人間模様を載せて、その積み荷を揺らしながら、主人公の人生を調理、完成させていく。食と人間ドラマがマリアージュした上質で楽しく、また、温かな気持ちを与えてくれる映画だ。

フードトラックってなに?

この映画の主役的な存在となっている《フードトラック》は、キッチンカーとも呼ばれ、まさにキッチンを装備した車だ。日本だと、ラーメンの屋台を思い浮かべる人も多いのかもしれないが、米国ではフードトラックが人気を得て、その波はフランス・パリにも飛び火し、ミシュラン星付きのシェフがフードトラックを始めたり、パリらしくお洒落なフードトラックが登場したりと、その人気は世界各国に広がっている。
 日本でもここ数年で存在感を高めつつある。都心部ではオフィス街など人が集まる場所で、地方ではイベントなどに魅力的なフードトラックが集まり、美味しいお料理が提供されている。
フードトラックは店舗とも従来の屋台とも違う食の提供ができるのだという。第一に、フードトラックは店舗に比べて、メニューを絞ってこだわりの料理だけを提供できること、第二に、お客さまの目の前で調理して、その過程も見せながら、完成したアツアツの料理を手渡しできること。当然そこにはコミュニケーションも生まれやすくなる。第三に、意外にも一見(いちげん)さんだけでなく、常連さんを獲得していく商売であること。移動式というと一見さん相手の商売のように思いがちだが、SNSなどで販売場所や日時を告知し、ファン(常連客)を獲得していくそうだ。ファンが増えれば、映画の主人公・カールのようにトラックに行列ができる。店舗のように座席数に左右されることなく、売り上げを伸ばすこともできる。その意味では、まさに次世代の店舗形態としての魅力があるのだろう。

百花繚乱の賑わいと楽しみ

釜を積んだナポリピザのフードトラック
最近では、日本でも屋外販売の定番であるサンドイッチやホットドッグ以外に、専門的なメニューを展開する個性的なフードトラックも誕生している。自家焙煎コーヒーやフランス・ニースのローカルフード「ソッカ」、各国の本格カレー、コンフィ、グリル料理、タコライス、シチュー、スープ、スムージー、発酵デトックスドリンクなど、挙げればきりがない。さらに、本格派料理といえば、フードトラック内に釜を作り、ピザを提供しているツワモノもいる。
 味わいも多種多様ならば、トラックのデザインも多様だ。これから益々広がりを見せるに違いない。そして、食文化に百花繚乱の賑わいと楽しみを提供してくれそうだ。街角で見つけたら是非のぞいてみて欲しい。

海豪うるる プロフィール

青山学院大学卒。
15年以上にわたり、各種の家庭料理を研究。
食ともに、ヴァイオリン、陶芸、茶道など多彩な趣味を生かし、《五感で味わう彩食レシピ》を提案している。
また、食は年齢、性別、国籍を問わず、誰にも等しく必要で極めて身近なもの―そんな食を「万国共通の言語」のように捉え、食を通して世界各国の人とつながることを目指している。時には、《食》と、教育や政治、科学、音楽、映画など様々な分野の間をクロスオーバーしつつ、「美味しく、楽しい」という気持ちを生み出す活動を展開している。
郷里・奈良県の依頼で「奈良県観光産業活性化推進会議」委員も務め、現在は「奈良市観光大使」。
著書に、『本場の人気バル直伝!ピンチョスレシピ』、脳科学者の茂木健一郎氏との共著『脳を幸せにするレシピ』(いずれもPHP研究所)がある。
URL: http://www.ururu-ururu.com
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