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第109回
2018年 10月1日更新

“〜な秋”見つけた!


“読書の秋”の乙

 “〜な秋”が来た。当コラムの読者だと「食欲ね!」と思われる方が大勢だろうか。しかし、この度は、「読書」からスタートする。さて、どんな“〜な秋”が見つかるだろうか?

 先ずは、なぜに秋は読書なのだろうか? 諸説あるようだが、有力なのは、唐時代の中国の文人に韓愈(かんゆ)さんという方がおられ、詠まれた漢詩の一説に「燈火稍く親しむ可く」という一節があるということだ。その意味は、「過ごしやすい秋の夜長は灯り火の下で読書を楽しむのがよい」ということで、その詩を夏目漱石が三四郎の中で取り上げたことによって、読書の秋が広がったということである。納得感のある文脈だ。

 一方、体感的には、北国などはそうはいかないが、秋の気候は人が集中するのに良いとされる気温である日が多いし、秋は夜が長いので、その環境から読書を促されることもあろうと感じる。

 さて、そんな読書の秋であるが、本の世界は出版不況と言われて久しい。このような状況の中で、料理の「レシピ本」というジャンルは発行数と売上高を伸ばしていると聞いた。
理由はインターネットだ。ホームページやブログから始まり、各種のSNS(ソーシャルネットワークサービス)、そして一般の方々が自分のレシピを紹介するレシピ紹介サービスサイトの人気により、料理をする誰もが、それまで専門家しかレシピを広く発信することができなかった「レシピ本」の世界を一変させたのだ。そうしたネットのお料理情報が、紙の本の世界へ逆流したと言える。

 料理は文化であるから、レシピ本だけでなく、読み物として味わいのある作品も多い。先日お目にかかったマイケル・ブース氏は、日本の食文化を面白い目線で味わっていた。ということで、読書の秋で見つけたのは、彼の著書「英国一家、日本をおかわり」(KADOKAWA)だ。
お料理をして、美味しくいただいた後の秋の夜長は、料理本を楽しむのも乙である。

体感!?“食欲の秋”

 さて、次は“食欲の秋”だ。
秋は山海ともに自然の実りが多い。日本では大切な主食であるお米の収穫が秋であるから、やはり食を代表する季節とする冠は秋に与えて良いと思う。
 今年、私が夢中になった秋の味覚は、食用のほおずきだ。地元奈良県の「道安宝珠喜」(どうあんほおずき)は、トマトと同じくナス科に属する。トマトのような酸味と、トロピカルなフルーツを思わせる甘味が絶妙に混じりあったなんとも魅力的な味わいだ。野菜を食べているような果物を食べているような、感覚でパクパクと食べてします。生で食べる意外にも、オリーブオイルでかるく炒めてたべるのもまた美味しい。

“秋”〜食を最後の実りまで楽しむ

 もうひとつ、食欲の秋に見つけたのは、「枝豆」だ。「ん?普通では?しかもやや季節はずれ?」と言われるかもしれない。実は、「一寸法師」と命名された枝豆で、9月の後半くらいに、しかも10日間くらいしか味わえない幻の枝豆が存在する。
 一寸法師は新潟県の長岡市の在来の枝豆(肴豆)で、2003年から種の選抜と栽培を繰り返して産まれた。ブランド名のごとく全長一寸ほどで、ガスコンロでたっぷりのお水を沸かして、茹で上げると、他の枝豆にはない深い緑に変わり、口にすると、その香りと甘みが極上だ。

 「一寸法師」に限らず、秋には全国で貴重な実りがあるはず。インターネットを活用すれば、そうした情報を簡単に調べることができるし、手に入れることもできる。
 レシピ本はネットの世界の実りが、リアルな世界でも実って、秋の夜長に楽しめるようになった。自然の実りは、ネットの世界から手軽に手に入れて食欲の秋を豊かにしてくれるようになった。面白い関係だ。でも、どうあれ“食”は、火にかけたりお湯でゆでたりと、皆さんの手によって最後の実りを迎える。できることなら、“秋”は食を最後の実りまで楽しみたい。あなたの秋を見つけて欲しいと願う。

海豪うるる プロフィール

青山学院大学卒。
15年以上にわたり、各種の家庭料理を研究。
食ともに、ヴァイオリン、陶芸、茶道など多彩な趣味を生かし、《五感で味わう彩食レシピ》を提案している。
また、食は年齢、性別、国籍を問わず、誰にも等しく必要で極めて身近なもの―そんな食を「万国共通の言語」のように捉え、食を通して世界各国の人とつながることを目指している。時には、《食》と、教育や政治、科学、音楽、映画など様々な分野の間をクロスオーバーしつつ、「美味しく、楽しい」という気持ちを生み出す活動を展開している。
郷里・奈良県の依頼で「奈良県観光産業活性化推進会議」委員も務め、現在は「奈良市観光大使」。
著書に、『本場の人気バル直伝!ピンチョスレシピ』、脳科学者の茂木健一郎氏との共著『脳を幸せにするレシピ』(いずれもPHP研究所)がある。
URL: http://www.ururu-ururu.com
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