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第111回
2018年 12月3日更新

マルシェ


マルシェの魔法

 「マルシェ」とは、フランス語で、フランス発祥の「市場」のこと。パリなどを訪れたことがある方は、数ある屋内外のマルシェを楽しんだ方も多いのではないかと思う。旅先で地元民気分を味わえるのもマルシェの魅力だ。マルシェでは、野菜や果物のみならず、チーズやハム、パン、お惣菜、ワイン等の飲食物、アンティークやアクセサリーまで幅広く取り扱っている。その歴史は中世にまでさかのぼり、フランス人の食を支えてきた。もちろん、フランスに限らず、米国、英国、スペインなど様々なところで市場を楽しむ国はたくさんある。
 最近は日本でも「マルシェ」という言葉をよく耳にするようになった。2009年に農林水産省補助事業でスタートした「マルシェ・ジャポン」は、旗振り役の小山薫堂さんによると、「食材を作る人」と「それを料理して食べる人」が出会う場所なのだという。
 都内老舗マルシェのひとつ、赤坂アークヒルズの「ヒルズマルシェ」は、赤坂・六本木という便利でお洒落な場所で毎週日曜日に「マルシェ」が開かれる。都会のど真ん中で、生産者から旬の新鮮な野菜を直接買うことができる。生産者から食材のうんちくを聞き、それらの情報は味わいを構成する重要な要素となる。食材を手に入れる段階から“美味しい”調理が始まっているようでワクワクする。マルシェの魔法である。

地方のマルシェ力

 都会のマルシェでは、全国から生産者が集まり、各地の旬やその土地のめずらしいものをタイムリーに手に入れられるのも魅力だ。私は、長崎・五島列島の生産者から五島うどんのふし麺を買うのが楽しみだった。椿油を加えた手延べの細麺でコシがあり、「ゆでたうどんをオリーブオイルと塩で調味し、パルミジャーノレッジャーノチーズをたっぷりかけて食べるのも美味しいのよ」と教えられ、生産者とのやりとりも楽しみのひとつだった。
 マルシェは、地方にも広がりを見せている。栃木県足利市にある「門前マルシェ」と「えんマルシェ」(名称は閻魔さまにちなんでいる)は地元の人にも観光客にも人気が高い。中世の高等教育機関とされた足利学校の近くにあり、歴史的建造物やレトロな街並みが残る観光スポットだ。地元のお肉や野菜などの食材を洋風でお洒落な調理法や料理で提供しているギャップも楽しい。足利初のブランド牛は「足利マール牛ブロシュッ(串焼き料理)」、地元の大麦と野菜はポテトクリームとゴルゴンゾーラソースで素材を生かした美しいお料理に仕上げている。
 門前マルシェは、和のジェラートやガパオやグリーンカレーなどのタイ料理、キッシュなどバラエティーに富んだ品ぞろえだ。飲み物も麦茶やハーブコーディアルなど様々なものが、お洒落にレイアウトされたブースで提供されている。マルシェのプロデュースを行うプロに頼んで立ち上げただけあって、テントやディスプレイのお洒落感が高い。出展する参加者もうまく選んでいる。地元のモノはもちろん良いものは他の地域のものと一緒に地元のヒトに魅せる、売るための工夫を感じた。プロデュースした方に伺うと、「見た目は大切。店の選択やディスプレイの統一感にはこだわった」とおっしゃっていた。地方のマルシェの「力」を見た感じがした。

マルシェでニッポンを元気に!

 宇多田ヒカルさんを担当する名物プロデューサーは、今の音楽業界やヒットの作り方について、「フェスにたくさん人が集まるけど、フェスでは音楽は売れない。集まる人は体験、想い出を買いに来ている。今はそれが大事」と言っている。また、これからの時代は、「ひとりの人に対して、何かが響けば、その人が他の方にその良さを伝え広めてくれる。これまでのようにマスに対してではなく、1:1のアピールが1:n、n:nとなり、良さを広めヒットを作る時代」とも言っている。地方の魅力やモノも同じかもしれない。マルシェはフェスと同様にコミュニケーションや幸せな感覚を「体感」する場であるように感じる。
「物産展」はモノを買うことに比重がおかれるように感じるが、マルシェはまさに体感である。地方の生産者が都心に出ていくことも素晴らしいが、マルシェの魅力の本質を考えれば、都会の消費者が地方のマルシェに出向いて、それぞれの土地のユニークさを体感し、食の思い出を積み重ねることもとっても素敵だ。生産者も消費者も、両者でそうした素晴らしい体験をつくり出していけば、ニッポンの元気につながっていくに違いない。

海豪うるる プロフィール

青山学院大学卒。
15年以上にわたり、各種の家庭料理を研究。
食ともに、ヴァイオリン、陶芸、茶道など多彩な趣味を生かし、《五感で味わう彩食レシピ》を提案している。
また、食は年齢、性別、国籍を問わず、誰にも等しく必要で極めて身近なもの―そんな食を「万国共通の言語」のように捉え、食を通して世界各国の人とつながることを目指している。時には、《食》と、教育や政治、科学、音楽、映画など様々な分野の間をクロスオーバーしつつ、「美味しく、楽しい」という気持ちを生み出す活動を展開している。
郷里・奈良県の依頼で「奈良県観光産業活性化推進会議」委員も務め、現在は「奈良市観光大使」。
著書に、『本場の人気バル直伝!ピンチョスレシピ』、脳科学者の茂木健一郎氏との共著『脳を幸せにするレシピ』(いずれもPHP研究所)がある。
URL: http://www.ururu-ururu.com
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