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第99回
2017年 12月1日更新

ハンバーガー「チャーハンの王様」という某店のチャーハン



チャーハンの起源

 チャーハン(炒飯)の起源は古く、かまどの発達や鉄器の技術の進歩や普及と大きな関わりがある。6〜7世紀頃、かまどでご飯を炊くことが行われていた中国では、薪だけでなく、一部では石炭が燃料として使われるようになり、より強い火力を得られるようになった。火力が強くなり、手早く炒める料理が作られ、鉄器の技術の進歩で手軽に鍋を振れる中華鍋が生み出されたという。チャーハンの原型となる料理は、中国では隋(西暦581〜 618年)から唐(同618~907年)の時代にかけて誕生したらしい。調理に炎がもたらされ、私たち人類の食文化は豊かな広がりを見せた。火力が強くなることで中国の食文化はさらに進化していったということになる。
 中華料理における火の使い方、特にラーメンと並び、もはや″日本食“とも言えるほど定着したチャーハン作り方は、雑誌やテレビ、WEBなどでプロ・アマ問わず多くの方が、その技を披露している。チャーハンは、火の入れ方で、まったく違った料理と言えるほど、味わいが大きく変わる。そのことを日常の食生活で体感できるので、私たちは色々な技の情報を飽きることなく読んだり、見たりするわけだ。その時々で自分が「推す」火使いも変わるが、それもチャーハンの楽しみだといえる。

チャーハンと焼き飯の違い?

   美味しいお米料理は世界中にある。もちろん、米食文化の日本には、世界中の米料理が私達の文化に深く入りこんでいる。例えば、ピラフは、喫茶店やホテルなどで昔からお馴染みのメニューだが、これはチャーハンの原型がトルコに伝わって生まれた料理「ピラウ」とされる。トルコで生まれたピラウはフランスに伝えられた。フランスに渡り「ピラフ」となり、ヨーロッパを南下してスペインで「パエリア」、イタリアで「リゾット」、アメリカに渡り「ジャンバラヤ」となる。ちなみに、イタリアの「リゾット」とは、《最高の米料理》という意味だそうだ。
 チャーハンの原型が日本へもたらされるのは、遣唐使によるものだという。日本では「焼き飯」という呼び方も古くから市民権を得ている。鉄板焼きレストランでは、最後のシメのお楽しみとして「焼き飯」を出すのが定番だ。少量のお肉とガーリックを混ぜ合わせて焼き上げる。単純ではあるが、一つとして同じ味がないところも魅力だ。私など、シメの焼き飯が食べたくて、店を選ぶことさえある。それほどの「焼き飯」であるが、家庭でも手軽に作られている。余ったご飯と適当な具材をフライパンで炒めて、美味しくいただける。
 ちなみに「焼き飯」という言い方は西日本で多く、東日本では「チャーハン」と言う言い方が多いそうだ。  食材のこだわり、パテの火の入れ方、相性の良いパン(バンズ)などハンバーガーは立派な料理の域に達し、世界のトレンドも取り入れている。そのひとつと言えるのが、日本の「旨味」の概念を取り入れた米国のハンバーガーショップ「UMAMI BURGER」だ。今年、東京港区青山に初上陸し、話題を呼んだ。旨味となるシイタケ、トマト、チーズなどをトッピング食材として取り入れ、じっくり、根気よく火を入れて、上品な甘みと旨味が加わったキャラメル色の玉ねぎのソテーをのせてある。この店の看板メニューだ。
(写真参照)
イチロー選手も好きだというチャーハン

“チャーハン進化論”は続く

 長い歴史と近年の凄まじい進化でチャーハンは楽しい料理になってきている。私が噂を耳にし、口にした話題のチャーハンを紹介しよう。
 米国大リーガーのイチロー選手が帰国すると必ず食べに行くというチャーハンがある(写真)。カウンターしかないそのお店では、大胆に鍋を振りながら、カツンカツンとおたまを鍋にあてて美味しそうな音を立て、立ち上る炎でチャーハンを仕上げていく。出されたチャーハンは、見事な半円球を描いている。この姿も美味しさのうちで、チャーハンの様式美だ。厨房での炎と鍋振り、踊る米という勢いのある光景に反して、仕上がりは優しい色と味で、文句なしに伝統的かつ全国区的な「チャーハン」だ。極めて細かく刻んだネギやハム、卵がまんべんなくご飯と絡み合っている。ご飯の粒はしっとり感も保ちながら、表面はパラパラになるように上手に火が入っている。
 もう一軒は、某サラリーマンの聖地のビルの地下にある。メニューはチャーハンのみという大胆さ。チャーハンの王様というそのチャーハンは、高額な料金をとらなくても、パラパラチャーハンなんてあたり前だという。「一般的なチャーハンは、炒めご飯に具材を乗せた丼をただ混ぜただけのようなもの。ご飯の炊き方、卵や具の味付け、炒め方、すべてにこだわったチャーハンを食べてほしい」というメッセージがメニューに書かれている。
 炎の料理「チャーハン」そして「焼き飯」は、最近の家庭用ガスコンロの火力でも十分に美味しく仕上げることができる。
 炎とお米と対話しながら、「美味しくなったはず」という自分の感覚を信じて、楽しんで作れば良い。それが本来の料理の楽しみ方であり、原点であると思う。あなたもぜひ、独自のやり方で“チャーハンの進化論”に参加してみてはいかが。

海豪うるる プロフィール

青山学院大学卒。
15年以上にわたり、各種の家庭料理を研究。
食ともに、ヴァイオリン、陶芸、茶道など多彩な趣味を生かし、《五感で味わう彩食レシピ》を提案している。
また、食は年齢、性別、国籍を問わず、誰にも等しく必要で極めて身近なもの―そんな食を「万国共通の言語」のように捉え、食を通して世界各国の人とつながることを目指している。時には、《食》と、教育や政治、科学、音楽、映画など様々な分野の間をクロスオーバーしつつ、「美味しく、楽しい」という気持ちを生み出す活動を展開している。
郷里・奈良県の依頼で「奈良県観光産業活性化推進会議」委員も務め、現在は「奈良市観光大使」。
著書に、『本場の人気バル直伝!ピンチョスレシピ』、脳科学者の茂木健一郎氏との共著『脳を幸せにするレシピ』(いずれもPHP研究所)がある。
URL: http://www.ururu-ururu.com
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