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第88回
2017年1月4日更新

「柿」―名、実、味、そして葉まで


「名」=お正月の縁起物

 2017年、お正月を迎えた。一年の中でも特別な月である。皆様も、柿なますや干し柿など、柿を使った料理を目にする機会がたくさんあったのではないだろうか。秋の柿の季節以降、デパ地下では柿サラダ、柿のお漬け物、そして柿のデザートまで、輝くオレンジ色の商品がたくさん並ぶ。
 柿はその名から「(幸せを、福を)かき集める」として、お正月に縁起物として食べる風習がある地域が多い。例えば、信州では、元旦の朝一番に朝茶と一緒に豆(健康)、栗(くりくり:活発に働く)、柿(福をかきとる)を食べる風習をもつ地域がある。各地域でその名から縁起物とされてきたのだろう。

「実」=最強の効能

 名ばかりでなく柿には実(じつ)がある。「柿が赤くなれば、医者が青くなる」という言葉があるように、柿はビタミンCを代表格にビタミンK、B1、B2、カロチン、ミネラルなど豊富な栄養素を持つ。日本はもちろん欧州、中国など世界中で古くから薬果として知られてきた。また、柿の渋み成分であるタンニンには、抗酸化作用・抗菌作用がある。ビタミンCとタンニンは血液中のアルコール分を外へ排出してくれるなどの効用もあり、酒宴が多くなる年末年始には最適だ。豊富に含まれるカリウムは、体内の余分な塩分を外に出す効果もある。寒さも本番のこの時期、風邪の予防や乾燥を防ぎ、美肌づくりを気にかけている方にも味方につけたい最強の食材のひとつだ。

「味」=美味しさも色々

グラン・マルニエを混ぜた大人のデザート
 色々に姿を変えて、私達の日々の生活で食される柿。干し柿以外にも、乾燥させたスライス柿には、クリームチーズがとても良く合う。柿の天ぷらも、程よい甘さと塩のバランス、独特の食感は癖になる味わいだ。朝食やパーティのおつまみには、柿にオリーブオイルをかけてパルミジャーノレッジャーのチーズや生ハムと合わせて出すと大変に喜ばれる。
 そんな柿だが、ある時を過ぎると一気に柔らかくなって困るという声を聞く。柔らかくなった柿を美味しく頂く方法は、色々な方から教えて頂くが、最近の私のお気に入りは、へたをとり、グラン・マルニエ(オレンジのリキュール)をかけて、スプーンでまぜる。すると、とろりと、何とも言えない食感に柿の甘さとリキュールの香りがからみ、モダンな大人の一皿に仕上がる。ぜひ試して欲しい。

「葉」=その力、実(み)だけにあらず!

  柿といえば、実だけではなく、柿の葉も大活躍している。柿の葉の持つ抗菌作用を生かし、柿の葉でお鮨を包むことで保存性を高めているのが、奈良の名産「柿の葉寿司」だ。薄く切り身にした鯖などの魚、すし飯、柿の葉の三位一体のお寿司で、一口サイズのお鮨が柿の葉でくるまれているため、手が汚れることなく食べやすい。
 柿の葉寿司は、柿の産地であり、海のない奈良県で、お隣の和歌山で取れた鯖を使って、生まれた郷土寿司のようだ。奈良県の中南部では、柿の葉を用いてご家庭でも柿の葉寿司をつくっていたという話もきく。
 柿の葉寿司にそれほど馴染みのない方には、緑色の葉に包まった寿司がイメージだろうが、秋の紅葉シーズンには美しい赤色の葉に包まった柿の葉寿司が楽しめる。最近では鯖や鮭等の定番以外にも、野菜や大和牛等の柿の葉寿司も登場している。サンドイッチあたりが定番であるバーなどの軽食にも良いのではないだろうか。ちなみに、固くなったお寿司は、バーナーなどでちょっと炙るとまた違った味わいの変化が楽しめる。
柿の葉寿司

海豪うるる プロフィール

青山学院大学卒。
15年以上にわたり、各種の家庭料理を研究。
食ともに、ヴァイオリン、陶芸、茶道など多彩な趣味を生かし、《五感で味わう彩食レシピ》を提案している。
また、食は年齢、性別、国籍を問わず、誰にも等しく必要で極めて身近なもの―そんな食を「万国共通の言語」のように捉え、食を通して世界各国の人とつながることを目指している。時には、《食》と、教育や政治、科学、音楽、映画など様々な分野の間をクロスオーバーしつつ、「美味しく、楽しい」という気持ちを生み出す活動を展開している。
郷里・奈良県の依頼で「奈良県観光産業活性化推進会議」委員も務め、現在は「奈良市観光大使」。
著書に、『本場の人気バル直伝!ピンチョスレシピ』、脳科学者の茂木健一郎氏との共著『脳を幸せにするレシピ』(いずれもPHP研究所)がある。
URL: http://www.ururu-ururu.com
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