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第105回
2018年 6月1日更新

夏を先取り!「かき氷開き」


かき氷開き

 ゴールデンウィークになると、「山開き」が本格化しはじめる。「山開き」とは、その山でその年の登山が可能になる初日のことだ。安全祈願の神事等が行われ、登山のシーズンが始まる。学生時代から何度となく上高地に通った。昼間はバーベキュー、夜は星空を見上げ、川の音に耳を澄ませてキャンプを楽しんだ。上高地の「山開き」はゴールデンウィークだ。「今年は何回上高地に来られるかな」とウキウキしながら、その年の最初の上高地行きを楽しんだものだ。
 もうひとつ、ゴールデンウィークにワクワクしたのが、「かき氷開き」だ。奈良では、“氷を愛する神様”が祀られた氷室神社にちなみ、かき氷のお祭りが開催される。朝8時半に神事が行われ、出店者がかき氷を氷室神社に奉納する。近隣でかき氷を提供するお店を紹介した「かき氷マップ」なるものも制作されており、色鮮やかで、美しく、豪華なかき氷が並ぶ。山と同様、各店のかき氷開きは様々。5月から6月初旬にかけてが、かき氷開きのピークとなる。「ゴールデンウィークからかき氷とは、少し早くはありませんか?」と思う方もいるかもしれないが、かき氷祭りが行われるようになってからというもの、5月には「今年もすぐそこに夏がきているな」と感じようになった。

アツイ!かき氷

 かつてかき氷というと、お祭りや野球場、プール等でいただく、赤「イチゴ」、黄色「レモン」、緑「メロン」味のかき氷だった。勢い良く掻き込んで、舌を見ると赤くなっていたり、緑になっていたりする。小さいときは友達と見せ合いっこをしては笑い合っていた。
 今やかき氷は、お祭りや娯楽施設や甘味屋さんだけのものではない。ケーキ屋さんのかき氷には、生クリームやコンフィチュール(仏語・ジャム)がのっていたり、エスプーマ(スペイン語・ムースのような泡状になったもの)がかかっていたり、まるで芸術作品のような美しさだ。甘味屋さんでも、きな粉や黒蜜などを掛けたりして、対抗する。日本のかき氷は今や百花繚乱、立派なデザート料理の域に達しているのだ。
 かき氷は、容易に製氷できる国々でも楽しまれていて、日本にも紹介されて人気を博している。特に、韓国やタイのかき氷はフルーツなどのトッピングが豊富でかつ艶やかだ。いわゆる“インスタ映え”もあって、行列ができるお店も多い。とても冷たいかき氷だが、それを求める熱はアツイようだ。

かき氷とて、素材を楽しむ

 さて、トッピングやシロップで味や艶やかさを競うかき氷だが、かき氷の主たる材料は氷である。「氷は水を凍らせたもの」などと言うなかれ。日本人は水の味に古くからこだわってきた。水の味わいを感じ取る日本人が氷の味わいを無視するわけはない。味わいには舌触りや見栄えなども含まれる。
 奈良に昭和16年創業の日之出製氷という会社がある。こちらでは“奈良の水をマイナス7℃で72時間かけると、 まるでクリスタル硝子のように綺麗な純氷が出来上がる”として製氷職人が丹精込めて美味しいく美しい氷を作っている。
 栃木県の日光では、透明度が高く、世界一硬い氷作りを目指しているという四代目氷屋徳次郎さんの氷が、キーンとした冷たさを感じることなく氷の美味しい冷たさを味わえるとして評判が高い。 さらに言うと、素材としての氷に加え、氷の削り方もポイントだ。私が子ども頃には、家庭用のかき氷機がブームになり、多くの家庭に普及していた。しかし、当時の削り味はもう一つであった。 一方、業務用では、かき氷機を専売する人気のメーカーもあり、米国でミシュランに輝く有名レストランの厨房にも鎮座して活躍をしていたのを拝見したことがある。シェフ曰く、これが最高の削り味で、これがなくなったらかき氷は作らないとのことだった。

かき氷大国へ

 かき氷といえども氷にまでこだわり、削り機にこだわり、その繊細な味わいを楽しめる日本の食文化を誇りに思う。四季が楽しめ、夏が楽しめ、夏の暑さを楽しむがごときに氷という素材を食として活用する日本人を誇りにも感じる。今は観光大国にもなりつつある日本であるから、海外のかき氷文化を楽しむのも大いに良いし、海外に日本のかき氷の美味しさ繊細さ楽しみ方を知らしめるのも良いことだ。かき氷大国であることを魅せつけたいところだ。
 夏を先取り!かき氷で、今年の夏を楽しもう!

海豪うるる プロフィール

青山学院大学卒。
15年以上にわたり、各種の家庭料理を研究。
食ともに、ヴァイオリン、陶芸、茶道など多彩な趣味を生かし、《五感で味わう彩食レシピ》を提案している。
また、食は年齢、性別、国籍を問わず、誰にも等しく必要で極めて身近なもの―そんな食を「万国共通の言語」のように捉え、食を通して世界各国の人とつながることを目指している。時には、《食》と、教育や政治、科学、音楽、映画など様々な分野の間をクロスオーバーしつつ、「美味しく、楽しい」という気持ちを生み出す活動を展開している。
郷里・奈良県の依頼で「奈良県観光産業活性化推進会議」委員も務め、現在は「奈良市観光大使」。
著書に、『本場の人気バル直伝!ピンチョスレシピ』、脳科学者の茂木健一郎氏との共著『脳を幸せにするレシピ』(いずれもPHP研究所)がある。
URL: http://www.ururu-ururu.com
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