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第91回
2017年4月3日更新

「サンドイッチ」


想い出のサンドイッチ

 私のサンドイッチに対する想い出は新幹線の食堂車でいただいたものから始まる。1968年(昭和43年)の新幹線食堂車のメニューには「ハムサンドイッチ(150円)」と「ミックスサンドイッチ(220円)」という記載があったようだ。私が小さい頃いただいていたのは、おそらくミックスサンドイッチであろう。長方形にカットされていたような記憶がある。一方、自宅で母が作ってくるものは小ぶりの三角カットのサンドイッチであった。時々正方形の時もあった。カタチがいろいろなところは、三角や俵型、丸型のある、おにぎりと共通だ。こんなところもサンドイッチが日本で愛されるにいたった理由かもしれない。
 その後のサンドイッチの記憶は、大阪などにある専門店「サンドイッチハウス グルメ」との出会いだ。海老フライと卵サラダの豪華なサンドイッチで、値段的にもご馳走という領域のサンドイッチだった。
 日本でのサンドイッチ体験とは別に、1980年代前半に留学先のオーストラリアで、私は海外におけるサンドイッチ体験をしている。そこでは、学校に持参するお弁当の定番としてのサンドイッチがあった。ホストマザーがサンドイッチ用のパンに好きなものを挟んでくれる。「今日は何がいい?」と聞いてくれる。まるで日本で母に「おにぎりの具は何がいい?梅とシャケ?」と聞かれているようなものだった。
 オーストラリアでは、日本の街のたばこ屋さんのようなお店でも、ハムの種類が選べて、薄くバターを塗ったパンに一枚好みのハムを挟み、サンドイッチ用のペーパーバックに入れてくれる。その場で雑談しながら作ってくれる、お弁当とおやつの中間的な感覚で作り立てをテイクアウトだ。子供ながらに、この土地に根付いた大切なものなのだろうと思った記憶がある。

サンドイッチの“今”

 近頃、本屋をのぞくとサンドイッチの本が多いことに気が付いた。パンの種類も様々、具の工夫はもちろんのこと、サンドイッチを徹底的に考察し、サンドイッチの構成の仕方までうんちくを唱えている。
 また、ネット上では、インスタグラム等のSNSで「わんぱくサンド」というビジュアル系ボリュームサンドが話題となっている。味を語る前に、野菜などを中心にした具材を極厚かつ極彩色に挟み込み、カットした時に断面がいかに美しいかを競っているようだ。もちろん、美味しそうでもある。
 また、肉ブームの影響もあるのか、ステーキサンドも増えている。こちらは、家庭というよりホテルのカフェやバー、ステーキ専門店などで提供されるのが中心だ。どこのお店も、絶妙な火加減と炎のマジックで焼き上げた自慢のステーキを、パンにもこだわり、趣向を凝らした野菜やソースと一緒に挟む。お値段も気軽ではないが、ステーキが美味しければ良いと言うわけにいかないのが、サンドイッチの難しいところかもしれない。パンや野菜、ソースとのバランス、そして一体感が大切だ。
まだまだ、伝説の逸品を創作できる料理かもしれない。楽しみなジャンルだ。

サンドイッチの凄味

 サンドイッチは、その時の気分がそのまま形になるお料理の一つだと思う。時に、忙しくしている私たちの空いたお腹を、控え目な存在ではあるものの、しっかりと満たしてくれるものであったり、ご馳走としてワクワクさせてくれたり、ボリューム満点でエネルギーをくれたりと、食べ手の目的や気分に合わせて変幻自在にその姿や内容を変えることができる。そこには料理としての凄味すら感じる。
 以前、音楽やイベントのプロデューサーとして著名な方と、「ロケやイベント現場での食事の手配」について話をした。彼は若いスタッフが、コストを節約する時に、単純に安い弁当に切り替えたことを嘆いていた。彼は、そのスタッフに「どこかで美味いパンを買ってきて、できれば新鮮なハムやら野菜やらをカットして準備し、好き好きにサンドイッチにして食べればよいではないか? 安い弁当より、よほど美味いし、身体に良い。それに安くもあがるはずだ」とアドバイスしたと言う。きちんとした作品を作るには、作り手がきちんと食事しなくてはいけない。無理な贅沢をする必要はないが、大切なことをないがしろにしては、良いものづくりはできないという、彼の信念と食に対する高い見識に、私はとても感心した覚えがある。同時に、「サンドイッチって凄いな!」とも思った。
 外食でもいいし、自宅でもいいし、この春、あらためてサンドイッチを食べてみようではないか!
  楽しんでみようではないか!

海豪うるる プロフィール

青山学院大学卒。
15年以上にわたり、各種の家庭料理を研究。
食ともに、ヴァイオリン、陶芸、茶道など多彩な趣味を生かし、《五感で味わう彩食レシピ》を提案している。
また、食は年齢、性別、国籍を問わず、誰にも等しく必要で極めて身近なもの―そんな食を「万国共通の言語」のように捉え、食を通して世界各国の人とつながることを目指している。時には、《食》と、教育や政治、科学、音楽、映画など様々な分野の間をクロスオーバーしつつ、「美味しく、楽しい」という気持ちを生み出す活動を展開している。
郷里・奈良県の依頼で「奈良県観光産業活性化推進会議」委員も務め、現在は「奈良市観光大使」。
著書に、『本場の人気バル直伝!ピンチョスレシピ』、脳科学者の茂木健一郎氏との共著『脳を幸せにするレシピ』(いずれもPHP研究所)がある。
URL: http://www.ururu-ururu.com
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